わたしは用務員の男の人に連れられて、扉から校舎に入った。そこにはわたしが住んでいる寮みたいにいくつかドアがあった。
用務員のおじさんは一番手前のドアを開けた。そこは狭い個室のような場所で、ベッドも置いてあった。この人はここで寝泊まりしてるのかな……。床や机にものやゴミが散らかっていて、すごく汚い。そしてちょっと変な匂いもした。
机の上にはえっちな本やビデオに紛れて、写真が何枚もあった。どれも高校生ぐらいの女の子の写真で、カメラの方を向いていない。撮られていることに全く気づいていなそうだった。女の子たちは体操服だったり競泳水着だったり、服が脱ぎかけだったり……どれもこの学校で撮られたものらしかった。
「……っ!」
わたしはその中に見知った顔を見つけてしまう。チアの衣装を着た凪沙ちゃんだった。それもわきとおへそと太ももがあらわになっていて……えっちな目的で撮られたような感じがする。その下には、制服姿で座って勉強している凪沙ちゃんの写真があった。太ももの間から、ブルーのショーツが少しだけ見えている。他の写真の女の子と同じで、撮られていることに気づいている様子はまったくなかった。
用務員のおじさんが盗撮してるっていうのは、ただのうわさじゃなくてほんとだったんだ……。
「そんなに気になるかい? 柚乃ちゃんのもあるよ」
わたしがその写真を眺めていると、用務員のおじさんは机の上から一枚の写真をわたしに見せた。その写真を見て、わたしは言葉を失う。
「こ、これ……っ」
それは、わたしが学校の和式のトイレでおしっこをしている写真だった。顔も下着も、あそこもおしっこも、全部はっきり写っている。和式ですることなんてどうしてもって時以外はないのに、そんなところまで撮られてるなんて信じられない。
「いい写真だよねえ。恥ずかしいところが丸見えだねえ」
そう言われてわたしは顔が赤くなるのを感じる。
「と、盗撮するなんて、最低……!」
わたしは目の前の用務員のおじさんに、せいいっぱい侮辱するつもりで言った。わたしだけじゃなくて、凪沙ちゃんやほかの女の子も恥ずかしいところを撮られてるかもしれないと思うと、絶対許せない。
でも用務員のおじさんは、わたしの怒りの視線をせせら笑う。
「おっと。そんなこと言っていいのかな? 制服返してあげないよ」
「……っ」
そう言われると、わたしは何も言い返せなくなる。用務員のおじさんは、わたしの身長の低さをからかうように、制服をタンスの上に置いた。わたしの背丈じゃ、ジャンプしてもギリギリ届かないくらいの高さだった。
そして、わたしを裸にしたまま用務員のおじさんはタンスの中をあさりはじめる。その中には、たぶん女の子に着せるためのいろんな衣装や、わたしが見たこともないような機械がたくさん入っていた。用務員のおじさんはそこから一枚の布といろんな道具を取り出して、わたしのそばのベッドの上に置いた。
「まずは着替えてもらおうかな」
用務員のおじさんはわたしにビデオカメラを向けて、撮影しはじめる。わたしは胸とあそこに当てている手に力を込めた。着替えるって……両方の手を外さないでするなんて、無理だ。わたしが立ちすくんでいると、用務員のおじさんは言う。
「早くしないと、ルームメイトの子が心配するよ。たしか、柚乃ちゃんのルームメイトは凪沙ちゃんだったよねえ」
「……っ、な、なんで……」
わたしの名前だけじゃなくて、寮に住んでることまで知られてる……。わたしはそのことにびっくりしてしまう。
「柚乃ちゃんと凪沙ちゃんは、二年生の中でも飛び抜けて可愛いからねえ。前から目つけてたんだよね」
「……っ」
気持ち悪い言葉に、背筋がぞくっとする。もしかしたら、凪沙ちゃんの写真もわたしの写真も、あれだけじゃなくていっぱいあるのかな……。
「ほら、早く着替えなよ。それとももっと恥ずかしい衣装がいいのかな?」
そう言われて、わたしは唇を噛む。そんなの絶対嫌だった。それに、今撮られるのを我慢すれば、少なくとも裸よりはましになる……。
わたしはそう思って、胸に当てていた手を離し、用務員のおじさんからからだを背けた。