【柚乃・身代わり羞恥調教 #00】プロローグ

 「凪沙ちゃん、そろそろ起きてー」

 わたしはスマホのアラームを止めて、凪沙ちゃんに言った。凪沙ちゃんはあいかわらずベッドに寝転がったまま、わたしのからだの後ろから腕を回している。凪沙ちゃんに抱きしめられるみたいになってるせいで、わたしもベッドから出られない。凪沙ちゃんの柔らかいからだを背中に感じて、こんなふうにされると、また眠くなってきてしまう。

 でも、もしここでまた寝ちゃったら、凪沙ちゃんもわたしも遅刻しちゃう……。わたしが凪沙ちゃんの腕をどけてベッドを出ようとすると、凪沙ちゃんはシートベルトみたいにつかまえてきた。

「凪沙ちゃん……ほんとに起きないと、遅刻しちゃうよ?」

「……起きてる」

 寝起きの凪沙ちゃんが、いつもよりちょっと低い声で言う。なんだかすこし体調が悪そうで、心配になる。わたしはそこでふと思い出した。

 そっか、凪沙ちゃん、今日あれの日だ……。

 ただだらけてるわけじゃなくて、ほんとにけっこうつらいのかもしれない。わたしはそんなに重いほうじゃないけど、凪沙ちゃんは毎月かなりしんどそうにしている。わたしはもぞもぞ布団の中でからだの向きを変えて、凪沙ちゃんの方を向いた。やっぱり、顔色もよくない……。

「……今日学校休む?」

 わたしがそう言うと、凪沙ちゃんは枕の上で小さく首を振った。

「……だいじょうぶ。朝だけだから」 

「そっか……。朝ごはん食べれそう?」

 凪沙ちゃんは、今度は小さくうなづいた。凪沙ちゃんはいつもお姉ちゃんみたいな感じで、わたしも甘えちゃうことがあるけど、今日はわたしがしっかりしないと、と思う。

「じゃあ、凪沙ちゃんはまだ寝てて。わたし朝ごはん作るから。……これ、離してくれる?」

「やだ」

 わたしが凪沙ちゃんの腕を軽く触って言うと、凪沙ちゃんにすぐ却下されてしまう。離してくれないとベッドから出られないし、朝ごはんも作れないのに……。でも、弱ってる凪沙ちゃんに冷たくするのもかわいそうな気がする。わたしが困っていると、凪沙ちゃんはいたずらっぽい笑みを浮かべて言った。 

「柚乃がちゅーしてくれたら元気出るかも」

「へ?」

 わたしはびっくりして、変な声を出してしまう。ち、ちゅーって……。

「ほらはやくー。柚乃がしてくれないと遅刻しちゃうかも」

 凪沙ちゃんはわたしがそれをするのを待ってるみたいに、唇をぱくぱくさせた。桃色のぷっくりした唇に、わたしは視線が吸い寄せられそうになる。凪沙ちゃんはとっても美人だから、こんなに近くで見つめられると、わたしでもちょっとどきどきしてしまう。

「す、するわけないでしょ。そんなの好きな人どうしですることだし……」

 わたしは凪沙ちゃんの顔から目をそらしてそう言った。凪沙ちゃんは大切な親友だけど、友だちどうしでそういうのはあんまりしないと思う。

「えー。でもあたしは柚乃のこと好きだけど。柚乃はあたしのこと嫌いってこと?」

「そ、そうじゃないけど!」

 凪沙ちゃんはすねるみたいに口をとがらせて、そんなことを言う。わたしだって、凪沙ちゃんのことは好きだけど……でも、いくら友だちとして好きでも、キスはやっちゃだめな気がする……。わたしが視線を落として渋っていると、凪沙ちゃんはダメ押しをするように言ってくる。 

「……あたしにするの、いや?」

 そして、ほんとに傷ついたような悲しげな表情をする。そんな顔を見ると、わたしは心が痛んでしまう。

 凪沙ちゃんにするのは、ぜんぜんいやじゃない。凪沙ちゃんがそれで元気が出るんだったら、いいのかも……。でも、ちょっと恥ずかしいし、やっぱり友だちどうしでするのっておかしい気がするし……。

 わたしがどうしたらいいかわからなくなっていると、凪沙ちゃんはくすくす笑う。

「もー、冗談に決まってるじゃん。柚乃はかわいいなあ」

 凪沙ちゃんはわたしの頬をつついた。からかわれたってことがわかって、真剣に考えてしまったのが恥ずかしくなる。でも、さっきよりも凪沙ちゃんの顔色はよくなっていて、わたしはちょっと安心した。

「……凪沙ちゃんのばか」

 わたしが頬をふくらませてそう言うと、凪沙ちゃんはまた笑った。

[PR]旅する魔女が行く先々でHな目にあうアニメ