ミナハが目を覚ますと、そこには真っ暗闇が広がっていた。
(……っ)
腕を動かそうとすると、頭の上の方でカチャカチャと金属の擦れる音が鳴る。足も何かに固定されていて、動かすことができなかった。ミナハが戸惑っていると、近くから男の声が聞こえる。
「へへ、やっと起きたか?」
「……っ、あんた……っ!」
聞き覚えのある声に、ミナハの心の中にまた怒りの炎が燃え広がる。それは、ミナハが以前捕まえた痴漢で──バスの中でミナハのからだを好き勝手にいじった男だった。バスの中で痴漢たちにからだを弄られ、想像もつかないような恥ずかしい姿を晒してしまって……ミナハはそれを悪夢だと思い込みたかったが、男の声を聞いて現実にされたことなのだと思い知る。そして、葉月が痴漢にひどいことをされたのも……。
「なかなかいい格好じゃないか。お前みたいな強気女にはお似合いだぞ」
自分の姿を見るまでもなく、どんな恰好をさせられているのかは分かってしまう。肌に触れるのは手錠や足枷と、背中にあたる拘束具の感触だけだった。今日身に着けていたはずのノースリーブスやホットパンツ、それにブラやショーツまで剥ぎ取られていて、素肌に空気を感じる。ミナハは男の前で、裸で磔にされて──しかも、目隠しまでされていた。
「……っ、放して……っ! あんた、絶対許さないから……っ!」
ミナハが男に向かってそう言うと、男は彼女を嘲笑うように言う。
「相変わらず威勢がいいなあ。そんな格好でまだ強がれるのか?」
「……っ」
ミナハの心を見透かしたようなことを男に言われ、彼女は言葉を詰まらせる。男の前では毒づいたが、ミナハの心の中には怯えが顔をのぞかせていた。目隠しをされているせいで、今自分がどこにいるのかすら分からなくて──しかも、目の前には過去に捕まえた痴漢男が立っている……。いくら芯の強いミナハでも、ほんの少しの恐怖を感じずにはいられなかった。
「へへ……お前の身体にたっぷり分からせてやるからな」
男はそう言いながら、ミナハの胸に手を這わせる。そして、さりげなく自己主張する彼女のふくらみを、ねっとりと揉み込んだ。
「お前のせいで捕まってからしばらく痴漢できなくて溜まってるからよお。仕返しがてら、お前のことめちゃくちゃに犯してやろうと思ってたんだよな」
彼女のからだを弄くりながらニヤけた口調で言う男に、ミナハは悔しい気持ちになる。男はミナハを怖がらせるためにそう言っている──そう分かっていても、自分のからだに男の恨みをぶつけられることを想像してしまう。ミナハは怯えを男に気取られないように、反抗的な言葉を口にした。
「卑怯者……っ、ほんと最低……っ!」
ミナハがそう言うと、男は陰湿な笑みを浮かべる。
「へえ、そんな口聞いていいのか? ほら」
男はそう言いながら、弄んでいた彼女の右の胸の先端をいきなりぎゅっとつねり上げる。
「──っ、あ……っ!」
突然与えられた痛みに、ミナハのからだが跳ねる。男は数秒で指を離したが、その一瞬の痛みはミナハの心の中の恐怖を引きずり出すには十分だった。男の手が今度は左の胸に触れただけで、ミナハはぴくっとからだを震わせてしまう。
「へへへ……震えちゃって可愛いねえ。もう化けの皮が剥がれてきたか?」
「……っ」
男はミナハに恐怖を植え付けたことに満足げな笑みを浮かべながらそう言った。内心を男に気取られ、ミナハは奥歯を噛みしめる。
「ちゃんと全部録画しながら調教してやるからなあ。姉妹揃ってAVデビューだな」