「へへ……そろそろいじられたくなってきたか?」
男の言葉に、ミナハは噛みつくように言い返す。
「そんなわけないでしょ……、ほんと最悪……っ!」
ミナハは男の言葉を否定したが、ローションのせいで彼女のからだが敏感になってしまっているのは一目瞭然だった。男は新たな道具を手にとってミナハに言う。
「へえ、もっと欲しいのか? じゃあたっぷり塗りたくってやるよ」
その言葉とともに、ミナハの右の胸の先端に、男の無骨な指とは違った感触が触れる。しっとりと濡れた羽毛のようなものが、彼女の乳首のまわりをそっとなぞった。こそばゆい刺激に、ミナハのからだがぴくっと反応する。
「ん……っ、く……っ」
男は筆のような道具で、彼女の胸の先っぽを撫でる。その毛先には、彼女の肌に塗られたものと同じローションがしみ込んでいた。ただでさえ敏感なその場所に、得体のしれないローションを塗られ、しかも柔らかい毛先で刺激を与えられて──もてあそばれることに慣れていない彼女の突起は、ぴんと尖り切ってしまう。
「……っ、んん……っ、んく……っ!」
しかも男は彼女の一番敏感な真ん中には触れず、周りだけを筆でなぞり続けてくる。右の乳首をくすぐられた後は、左にも同じことをされて、ミナハは苛立ちながらも悩ましげな吐息を漏らす。バスの中でもされたように、焦らして、性感を感じさせて、ミナハにさらに屈辱を与える……そんな見え透いた意図が分かっていても、ミナハのからだは男の思いどおり刺激に感じてしまう。そして──焦らされ続けるうちに、ミナハの脳裏に一瞬だけ、もしいまその敏感な場所を刺激されたら、という思いがよぎった。
(……っ、そんなこと考えちゃダメ……っ)
ミナハがその考えを追い払おうとする前に、まるで彼女の心を読んだかのように、いきなり男は筆先を彼女の薄い色合いの先端にこすりつけた。
「──っ! ああ……っ! んんんっ!」
想像していた以上の快感が、右の胸の先端からからだに流れこんでくる。ローションを塗りたくられた上に、焦らされてさらに敏感にさせられたその場所への刺激を、反応せずに受け止めることなんか、ミナハにはできなかった。甘く甲高い声を上げながら、ミナハはからだをびくびくと跳ねさせる。男はそんな彼女の反応を見てあざ笑った。
「へへ、そんなに気持ちいいか? ほら、もっとしてやるよ」
「……っ、く……っ、んん……ぅ……っ!」
右の胸の先っぽから筆が離されたかと思うと、今度は左の先端に毛先がこすりつけられる。男の指で弄られるのとは違う、柔らかい刺激を、ミナハのからだは快感として受け取ってしまう。悔しさに歯噛みしながらも、男の筆が左右の乳首の上を行き来するたびに、ミナハはからだを震わせる。そして、弄られれば弄られるほど、彼女の胸の先端は刺激を敏感に感じ取るようになってしまって──。
「……っ、ああ……っ! く……っ、んん……っ!」
秘所をいじられてイかされたときのように激しい快感ではないのに、耐えるのがたまらなく苦しくなる。それなのに、男はしつこく彼女の乳首に筆責めを続けてくる。「もうやめて」──ミナハは男に向かって、そう口を開きかけてしまう。
「……っ」
それでも、ミナハは唇を噛んで、その言葉を押し込めた。いくら快感で追い詰められても、卑怯な痴漢に懇願するなんて、ミナハのプライドは許さなかった。彼女は口をつぐんで、男の責めをひたすら耐え忍ぶ。
男は彼女の胸の先端を思う存分弄んだあと、彼女のからだから筆を離した。
「へへ、乳首だけでずいぶん感じてたなあ。みっともないぐらいピンピンに勃起させやがって」
そんな辱めの言葉をかけながら、ローションで濡れて固くなった彼女の乳首に息を吹きかける。それだけでびくりとからだを震わせてしまうほどに、彼女のその場所は敏感になり切っていた。
「ほら、今度はこっちだ」
ミナハに息をつく暇も与えず、男はローションを含ませた毛先を彼女のへそに這わせる。
「ひゃんっ!」
そこは彼女の弱い場所の一つだった。目隠しされているせいで身構えることもできず、いきなり肌に触れた冷たい感触に、ミナハは少女らしい声を漏らしてしまう。男は彼女のそんな反応に笑い声を上げた。
「こんな場所が敏感だなんて、やっぱり変態だな。もっと敏感になるようにたっぷり塗りたくってやるよ」
「……っ」
変態、という言葉は、彼女にとってもっとも受け入れがたいものだった。彼女自身、痴漢男たちをそう呼んで蔑んでいたから、自分がそんな男たちと同じだなんて絶対に認めるわけにはいかない。それなのに──
「あ……っ! んん……っ、ひゃ……っ!」
筆先がへそをくすぐると、ミナハはからだをびくつかせてしまう。引き締まったウエストに沿うように美しい形をしたそのくぼみは、中までローションで濡らされて、艶めかしく光っていた。湿らされたその場所の肌からは、筆の毛の一本一本の動きまで鮮明に感じとってしまって、ぞわぞわとからだを溶かすような快感が走る。
「……っ、んう……っ、あ……っ!」
そして、また触られてもいないはずの秘所がひくついて、たらりと透明な液体が垂れた。男はそれを見逃さずに、彼女を言葉で責め立てる。
「おい、またマンコからよだれ垂らしてるじゃねえか。そんなにへそ弄られるのが好きか?」
「……っ」
目隠しをされていても、自分の秘所から液体が垂れてしまうのを感じることはできて──そのせいで、男が彼女を辱めるためにデタラメを言っているのではないということが、ミナハには分かってしまう。ミナハは何も言い返せずに、耳を赤くする。そんな彼女の反応に男はニンマリと笑いながら、彼女の弱点の上で筆を動かし続けた。
「ほら、好きなだけ弄ってやるよ」
「……っ、ああ……っ! く……っ、んんん……っ!」
彼女のへその奥まで侵そうとするように、男は筆先をぐりぐりと押し込んだ。からだの反応を押さえつけようとするものの、敏感にされた彼女のからだではそれもままならない。彼女のしみひとつない腹部が痙攣するように動くのと同時に、秘所からはまた愛液のしずくが床に垂れる。
「へへ……へそ弄られて大喜びだなあ。この変態女め」
男に笑われるたび、ミナハは羞恥と屈辱に奥歯を噛みしめる。縛られ、目隠しをされたまま、ミナハはひたすら男の責めに耐え続けた。