「ひゃっ!?」
鎖骨の近くの肌の上にいきなり冷たい液体が降りかかり、ミナハは思わず声を上げてしまう。男はその液体をたっぷり彼女の白い肌に垂らしたあと、両手で塗り広げ始めた。
「……っ、ちょっと、変なもの塗らないで……っ」
目隠しをされているミナハには、男が手にしているものの色も形もわからない。ただ、ぬるぬるした液体が、気持ち悪い男の手で肌に塗られていく──その感触がわかるだけだった。男は彼女の肌の滑らかな感触を楽しみながら、無遠慮にからだをまさぐり、ローションを広げていく。
「……っ」
男の手がわきに触れると、ミナハのからだがぴくっと動く。そして、反応してしまったことを恥じるように、ミナハは身を固くした。何度からだをいじっても初々しい反応を返す彼女に、男はほくそ笑む。そして、ローションのたっぷりついた両手で、彼女のやや小ぶりな乳房に触り始めた。
「……っ、く……っ」
男の手が彼女の胸を撫で回し、液体を塗り込んでいく。クールな彼女とは対照的に可愛らしい膨らみは、男の手の動きに合わせてぐにぐにと形を変えられる。まだハリを残した彼女の胸の感触を楽しみながら、男はその膨らみをしつこいほどに揉み込んだ。
「へへ……」
視界を奪われているミナハにも、男の荒くなった鼻息が伝わってくる。男嫌いのミナハにとっては、こんなことで興奮する男を蔑まずにはいられなかった。
(胸なんかで興奮して……男ってほんとキモい……っ)
生理的な嫌悪感を我慢しながら、ミナハは男の気持ち悪い手つきに耐える。しかし、触られ続けているうちに、その部分がじんじんと熱を持ち始めて──ミナハは湿った吐息をついてしまう。
「ん……っ、ぁ……っ」
一度性的な感覚を意識してしまったせいで、ミナハのその部分はどんどん敏感になってしまう。男は彼女にさらに性感を感じさせようとするように、手のひらの上に載せた乳房をさらにいやらしい手つきで揉んだ。マッサージするようにねっとりと触りながら、時折彼女を屈服させようとするかのように強い力で押しつぶす。そのたびにミナハのからだはびくりと震え、吐息はさらに熱を帯びてしまう。
「あ……っ、く……っ、んん……っ! ん……っ」
ミナハは無意識のうちに足をもじつかせてしまい──そして、触られてもいない秘所から、またわずかに液体が染み出してきてしまう。男はそれを見とがめて、ミナハに囁いた。
「へへ、胸揉まれるのがそんなにいいか?」
男に言われ、ミナハは唇を噛み締める。
(こんなことで……っ、ほんと最悪……っ)
こんなふうになってしまうのは、寝ている間にからだに何かされたせい──そう分かっていても、最低な男にからだをいじられて感じてしまうのは、とてつもなく悔しかった。男はミナハの乳房の感触を堪能したあと、ようやく胸から手を離し、さらに下へとローションを塗り拡げていく。
男の無骨な手が、ミナハの肌の上を無遠慮にからだを這い回る。手は彼女の細い腰を愛でるように往復し、白い肌にぬるぬるした液体を塗り込んでいく。そして、手慰みのように、さっきまでの痴漢行為で知った彼女の弱点を弄んだ。
「ん……っ! く……っ、や……っ」
男の指が彼女のへそをいじくると、びくっとミナハのからだが跳ねた。男がそんな彼女を馬鹿にするように笑うと、反応してしまったことを恥じるようにミナハの耳が赤く染まる。男は彼女の敏感な性感帯への責めをわざと取っておくように、すぐに彼女のへそから指を離した。そして、そのまま手を彼女の背後に回して、つんと上を向いたおしりを触り始める。
「へへへ、たまんねえな。バックで犯すのも楽しそうだなあ」
「……っ」
男の言葉に、ミナハは自分がそうされているのを想像してしまいそうになる。引き締まっていながらも女性らしく丸みを帯びたミナハのおしりを、男は揉み込みながら撫で回した。そして、男の手は少しずつ彼女の内またに入り込み、彼女のすらりとした太ももを愛撫する。
(……っ、気持ち悪い……っ)
本当に痴漢されているかのような感触に、ミナハの肌があわ立つ。男はミナハの滑らかな肌の感触を堪能しながら、ローションを塗りたくった。やがて、彼女のからだがくまなくローションに覆われると、男はようやく手を離す。
「へへ、なかなかいい姿になったなあ。AV映えしそうなエロい恰好だぞ? ほら、上から下までちゃんと撮っといてやるからなあ」
「……っ」
ミナハの透き通るような白い肌は、ローションに汚されてぬらぬらと光っていた。男はそんなミナハを言葉で辱める。ミナハには自分がどんな姿をしているかすら分からなくて──そんな姿にカメラを向けられていると思うと、さらに羞恥を感じてしまう。それに──
「……っ、ん……っ」
男に触られているわけでもないのに、ミナハのからだがぴくっと震え、拘束具が音を立てる。
(……っ、さっきより敏感になっちゃってる……っ)
胸をいじられているときに感じた違和感は、男にからだをまさぐられるうちに全身に広がってしまっていた。ミナハが足をもじつかせると、男は彼女の様子をニヤニヤ見下ろして言った。
「へへ……モジモジしてどうした? 顔も真っ赤になってるなあ」
「……っ」
その口調から、ミナハはこれも男が仕組んだことなのだと直感的に理解する。ローションにも、きっと何か細工がしてあって、塗った場所を敏感にさせられて──。卑怯な手段で彼女を辱めようとする男に怒りを感じながら、ミナハはからだの火照りを抑えようとする。
(……っ、こんなの最悪なのに……っ!)
しかし、時間が経つほどローションはミナハの肌に染み込んでくる。部屋のわずかな空気の流れさえ、ミナハにはこそばゆく感じられてしまうほどになっていた。