月曜日の放課後、あたしは男子たちに呼び出された。スクール水着に着替えて、男子更衣室に来い──それが、男子の命令だった。男子に渡された水着は、からだにぴったりと張りつくような濃紺の生地に白い縁取りがついている。こんなものを着るのは中学生の時以来だった。
これから何をされるかはだいたい予想がついていたけど、男からの命令には従わなくちゃいけない。これも、柚乃を守るためだから……。
裸足で男たちが待つ部屋に踏み入ると、おお、と歓声が上がった。部屋には三人の男子がいた。ひとりは最初に柚乃のレイプ動画であたしを脅してきたクラスの男子。あとの二人もクラスメイトだった。
あたし以外は全員制服を着たままだった。プールで遊ぶとか、そういう気はないらしい。
「けなげだねえ。大好きな柚乃ちゃんを守るために、こんな格好までするなんて」
男たちが欲望をあらわにした目で、あたしを頭からつま先まで舐めるように眺める。ねばつくような視線から逃れようと、自分のからだを抱くようにすると、あたしの羞恥を楽しむように、男たちは下卑た笑みを浮かべた。
「させたのはあんたたちでしょ……っ」
立ち尽くすあたしに、男たちはスマホのカメラを向ける。そして、さらに羞恥をあおるように、カシャカシャと音を立てて写真を撮り始めた。
「やべー。この写真だけでオナれそう」
「クラスの男子も欲しがるだろうな」
男たちはあたしを囲んで、隅々まで撮影した。あたしはからだを抱きながらうつむくことしかできない。
「スタイルいい女はスク水が似合うな。肌も際立つし」
そう言われて、からだのラインを強調するようなものを着させられていることに、苛立ちと恥ずかしさを覚える。あたしがいつも日焼け止めや保湿クリームを塗って白く保っている肌も、今は男たちを欲情させるためのものになっているのかと思うと、悔しくてたまらない。
「最低……」
あたしの罵りをあざ笑いながら、男たちは要求を下す。
「そろそろ手を下ろして、そのでかい胸でも見せてもらおうか」
柚乃を守るためには、こんな命令にも従わないといけない。あたしは歯噛みしながら、両手を下ろした。男のひとりが口笛を吹き、一斉にシャッター音が鳴り響く。
「やっぱでけえな。クラスで一番じゃね?」
「少なくとも紗倉よりはでかいだろ」
「くびれもちゃんとあるしな。紗倉とは大違いじゃん」
男たちが笑い声をあげる。柚乃が気にしていることをネタにする男たちに対して、頭に血が上りそうになる。
「はやく揉みしだきてえ」
あたしのからだへの品評を口にしながら、すでにあたしを犯す妄想をしているのか、男たちの起った下半身が嫌でも目に入る。
「こいつの胸で抜いてもらいたかったんだよなぁ」
クラスにいるときからそんなことを考えていたらしい。あたしだけでなく、柚乃までそういう目で見られていたのかもしれないと思うと、男たちに怒りしかわかない。
「変態……」
睨みつけても、男たちはにやにやとした笑みを崩さない。
「生意気な女を屈服させるのが一番興奮するんだよな」
あたしの肢体をさんざん視姦し、撮影したあと、そろそろ始めるか、と男たちはあたしを取り囲んだ。裸同然の格好にされ、自分よりも体格がいい男たちに囲まれて、少なからず恐怖を感じてしまう。
「そんな怖がるなよ。ちゃんと気持ちよくしてやるから」
「あんたたちなんか怖くない」
「ふーん。その割に震えちゃってるけどな」
ふたりの男があたしの腕を片方ずつつかんで、持ち上げる。残ったひとりが、慣れた手つきでロープを結びはじめた。
「いや、放してっ」
抵抗しても、男三人の力にかなうはずもない。あたしは簡単に、両手を上げた状態で拘束された。ロープは天井のむき出しのパイプに回されて、固定される。
「……っ」
足は自由に動かせるものの、男を蹴ればどうなるかなんてすぐにわかる。というか、あたしは目の前の男に従わないといけないんだから、縛る必要さえない。あたしを縛るのは、ただ単に、あたしのみじめな姿を見て楽しむためなのだ。
「いい恰好だな」
正面に立つ男が、あたしの胸の先端を指でくすぐる。直接触られるのとは違う、もどかしい感触に、呼吸が乱れてしまう。
「じゃ、こっちも始めるか」
右の男が、あたしのわきを撫でた。手を上で縛られているから、わきを守ることもできない。
「くっ……」
憎い男たちにからだを弄られる不快感と、性感帯を責められてわずかに感じてしまう快感。それを悟られないように、あたしは唇をかみしめる。
もうひとりの男が、あたしの左耳に息を吹きかけた。それだけで、背筋をぞわぞわした感覚が走り抜け、あっ、と声が漏れた。
「おいおい、耳弱すぎだろ。ほら」
「ん……っ」
男の舌が、あたしの耳を犯しはじめる。耳たぶに唾液をこすりつけるように舐められ、溝に沿ってねちっこくしゃぶられる。左耳が水音であふれる。好きでもない男にされても気持ち悪いだけのはずなのに、あたしのからだはそれを性感として受け取り、無意識にびくびくと反応する。
あたしが男たちを睨みつけると、先っぽを弄っていた手が、あたしの胸を鷲掴みにする。そのまま、感触を楽しむように、ねっとりと揉みこまれる。
「んあっ……」
同時に耳から首筋へ、別の男の舌が移動し、声を押し殺せない。
「舐められて感じるなんて、ド変態だな」
「感じてなんか……くぅっ」
弱いと男に思い知らされた首筋を、舌が這いまわる。わきをくすぐっていた男も、あたしのわきに舌を這わせはじめる。
「そ、そんなところ、舐めないでっ」
あたしの抗議が聞き入れられるはずもなく、味わうように舌があたしの肌の上を行ったり来たりする。夏だし、今日は体育の授業もあったから、相当汗をかいた──そのことを思い出すと、余計に恥ずかしくなってしまう。
「女の味だな」
「俺も味見しよ」
左の男もあたしの左わきを舐めてくる。味わわれる羞恥と、わきを舐められることによるくすぐったさが混ざり合い、あたしの理性を溶かそうとしてくる。かぶりを振って、快楽を追い払い、男たちへの抵抗心を保とうとする。
「さ、最悪……やっ」
恨みがましく言うと、胸を揉みしだしていた男が、いきなり乳首を指ではじいた。わずかな痛みに顔をしかめると、それからやさしく撫でられ、また強めにつねられる。
「やぁ……あうっ」
左右交互に同じことをされ、あたしのからだは面白いように男の指に翻弄されてしまう。
「すぐ固くしやがって。そんなに気持ちいいのか?」
「そんなわけ……やぁっ」
もともと胸のあたりが少しきついスクール水着だったが、いまはその上からでもわかるほど、あたしの胸の先っぽは尖ってしまっていた。まるで、あたしの意志に反して、男からもてあそばれたがっているようだった。
「どれどれ」
胸から手を離し、男は顔をあたしの秘所に近づける。足を閉じて隠そうとしたが、間に合わない。あたしのその場所を見て、男はにやりと笑った。
「触られてもいないのに濡れてるなぁ……」
「ち、ちがう!」
水着の上から、太い指であたしの恥ずかしい場所を擦ってくる。からだに密着しているせいで、簡単にどんどん滲みだしていく。あたしが男たちの責めで快楽を感じてしまっている動かぬ証拠だった。
あたしの口先だけの否定に、男たちがせせら笑う。男のひとりが、更衣室のベンチにプラスチックの容器を取りに行った。ベンチの上には、あたしを辱めるために用意されたらしい道具がいくつか並んでいた。