やがて、男子は我慢できなくなったみたいに、あたしの体操着の裾から手を潜り込ませてくる。直接触られるのは嫌だったけど、あたしには抵抗することもできなくて──指一本動かせないまま、男子がブラの上からあたしの胸を触るのを許してしまう。
「おい、ちょっと蒸れてないか?」
「……っ!」
男子の言葉にどきっとする。今日は体育館もじめじめしていて、結構汗もかいちゃってて……授業後なら、ちゃんとシートでからだを拭いて、ヘアミストもするのに、今は授業中に抜け出してきたせいでそんなことできてなかった。胸のあたりはほかの子より蒸れやすいから、すごく気をつけてるのに……。
何もしないで、と祈るような気持ちで、あたしは立ちすくむ。でも、男子はあたしのそんな気持ちにも構わず、あたしがいちばんやってほしくないことをしてくる。
「へへ、どれどれ」
男子はあたしの鎖骨のあたりに顔を近づけて、すんすんと鼻を鳴らした。そこは、体操着の中でこもった匂いが漏れちゃう場所で、しかも谷間の上だから、ほんとに嗅がれたくない。でも、からだを逃がそうとしても、男子と硬いコンクリートの壁に阻まれて身動きが取れなかった。
「んー、最高だわ。いつもいい匂いでごまかしてるけど、お前ホントはこんなにいやらしい臭いさせてるんだなぁ」
男子の言葉に、恥ずかしくてたまらなくなる。あたしの匂いで興奮しているように、胸を揉む男子の手つきが荒っぽくなる。そして、鼻息を荒くしながら、あたしの肌に密着するほど顔を寄せて何度も匂いを嗅いできた。
「……っ、やだ……っ!」
あたしはとっさに男子のからだを押しのけようと、胸の前に腕を上げかけて──でも、男子に言われた言葉を思い出して、その力を抜いてしまう。中途半端に浮かせたあたしの手首を、男子はもう片方の手で強引につかんで、そのまま上に挙げさせた。
「あ……っ!」
あたしは片腕をからだの上で縛られたような格好になってしまう。一瞬、嫌な予感があたしの頭をよぎった。その予感通りのことを、男子はしはじめる。
男子はあたしのわきに顔を近づけて、そのまま体操着のその部分に顔を埋めた。そして、あたしのそこの匂いを堪能するように、鼻息を吸い込む。
「いやぁ……っ!」
あたしはそんな声を漏らしてしまう。体育の授業もあったし、それにさっきから男子にずっと恥ずかしいことをされてるせいで、そこはじっとりと汗ばんでしまっていた。だから、そこだけはほんとに嫌だったのに……あたしをいじめることばかり考えている男子が、見逃してくれるはずなかった。
「こっちの方が濃縮されてるな。たまんねえわ」
男子はそんなことを言いながら、ずっとその場所を嗅ぎ続けてくる。あたしは恥ずかしさで足が震えて、立っていられなくなりそうになってしまう。でも、あたしには抵抗することも逃げ出すこともできなくて──男子が満足するまで、されるがままになるしかなかった。
あたしがその辱めに必死に耐えていると、男子はあたしのその場所の匂いをとことん楽しんでから顔を離す。そして、あたしの表情を見てニヤニヤ笑いながら言ってくる。
「おい、もう涙目になってんじゃねえか。匂い嗅がれるのかがそんなに恥ずかしいか?」
男子の言葉に、あたしは唇を噛む。きっと、男子はいつもあたしが匂いに気をつけているのを知っていて、それでこんなことをしてきたんだ……。男子の思い通りに恥ずかしがる姿を見せちゃったのが、すごく悔しかった。
「……っ、ほんと最低……っ」
あたしの左の手首をつかむ男子の手の力がすこし緩んだのを感じて、それを振りほどいた。あたしがさげすむような言葉を口にすると、男子は舌なめずりをする。
「おいおい、まだ足りないのか? しょうがねえな」
「……っ、ちがっ、ひゃ……っ!」
あたしが反抗的なことを言ったからか、男子はまたあたしのからだに顔を寄せた。そして、今度はあたしの首筋の近くで鼻を鳴らしたかと思うと、そのまま舌で肌をなぞってくる。
「……っ、やだ……っ!」
あたしの口から、うわごとのようにそんな言葉が漏れる。最低な男子に舐められるなんて、ほんとに気持ち悪くて──しかも、あたしの肌は体育の授業と気持ち悪い男子の責めのせいで汗ばんでしまっている。そんなところを舐められたりしたら──。
「へへ、なかなかうめえな。甘じょっぱい女の味だぞ」
男子はあたしの恥ずかしさをあおるようなことを言いながら、首筋に沿ってねっとりと舌を動かしてくる。汗ばんだ肌を味わわれるなんて、もうやだ……。羞恥で頭がおかしくなりそうになりながら、あたしは目をぎゅっとつぶって耐え忍んだ。
男子の舌は、ナメクジのように少しずつあたしの首筋を這い上がってくる。熱くて湿った感触が肌の上でうごめくと、ぞわぞわと鳥肌が立つような感触が走る。そして──
「ひゃう……っ!」
男子の舌があたしの耳の裏をなぞると、あたしは甲高い声を漏らしてしまう。耳は、あたしの弱点で──そのことは、もうとっくに男子に知られてしまっていた。耳を責められると、あたしはどうしてもからだの反応を抑えられなかった。
「相変わらずザコ耳だな。後でたっぷり責めてやるからな」
そんなふうに耳元で囁かれて、男子の吐息がかかるだけで、背筋がぞくぞくしちゃって……あたしは、自分のそんな弱点が嫌になる。そうやってあたしの首筋に舌をなすりつけたあと、男子はようやく顔を離した。
「……っ」
最低とか、変態とか、あたしは男子をののしる言葉を言いたかったけど──でもそんなことしたら、また恥ずかしいことをされるかもしれない……。あたしはうつむきながら男子に言う。
「……っ、気持ち悪いことばっかりしないで、さっさと終わらせてよ……」
あたしの声音は、恥ずかしいことをたくさんされたせいで、最初よりもずっと弱々しくなってしまっていた。男子はそんなあたしに情けをかけるどころか、もっといじめようとしてくる。
「へえ。じゃあ、お前も俺が早く満足できるようにしろよ。手コキぐらいできるだろ?」
「……っ」
手コキ、っていう言葉は聞いたことなかったけど、その響きから、男子は求めていることはなんとなく分かってしまう。きっと、男子のものを手ですることで……でも、あたしはそんなこと、一度もしたことがなかった。それに、あたしは男子に脅されて、無理矢理ひどいことをされてるだけだから──自分から男子のものを気持ちよくさせようとするなんて、そんなこと絶対いやだった。
「ほら、やれよ。手で最後までできたら、今日はマンコは使わないでやるぞ」
「……っ」
あたしが嫌がってるのを見てか、男子はそんなことを言ってくる。中に出されると、男子に汚されたような気持ちになるし、妊娠しちゃうかもしれないからすごく怖い。もう二度とあそこに挿れられたくなんかなかった。
もし男子を手で満足させられたら、あのいちばん屈辱的なことをされなくてすむ……。男子の思惑どおりのことをしてしまうのに悔しい気持ちになりながら、あたしは震える手で男子のズボンのベルトに手をかけた。