【葉月・陸上ユニフォーム姦 #00】プロローグ

 葉月痴漢編はこちらから→ https://yotakanovel.com/?cat=25
 (本編だけでもお楽しみいただけますが、お読みいいただければ一層お楽しみいただけます。)

 「なぎさ先輩!」

 陸上部の練習のためにグラウンドに向かう途中、凪沙とすれ違って、葉月は声をかけた。

「あ、葉月じゃん。今日は陸上? 毎日大変だね」

 凪沙は葉月が所属しているもうひとつの部活・チア部の先輩だった。凪沙は二年生の中でもひときわ目を引くくらいきれいで、スタイルもいい。その上正義感が強く、上級生に対しても顧問に対しても物怖じしない性格だった。いつも一年生たちをかばってくれるため、特に後輩から人気があり──もちろん、葉月にとってもあこがれの先輩だった。葉月は彼女のまねをしてスカートを短くしたり、同じところにヘアピンをつけたりしていた。

「はい! でも、チアはずっとやりたかったし……それに、走るのは得意だから、そんなに大変じゃないです」

 葉月はスポーツ少女で、中学生のときは陸上部に所属しており、三年生のときには都大会の女子200mで準優勝するなど、結果も残していた。しかし、チアリーディングにはずっとあこがれがあり──高校選びのとき、陸上の強豪校ではなく、チア部のある高校を選んだのだ。そして進学を期に、陸上ではなくチア部に入部することにした。

 とはいえ、女子陸上部のキャプテンは葉月を見逃さず、どうしても陸上部に入ってほしい、リレーで全国に出たいから、と彼女に頼み込んだ。最初は「チアをやりたいから」と断っていた葉月だったが、「兼部でもいい」「チアの練習がない日だけでもいい」「すぐやめてもいい」と何度も懇願されるうちに、最終的には押し切られるような形でチアと陸上を兼部することになったのだ。

 チアと陸上という、ハードな運動部の兼部は、蒼葉高校ではほとんど前例がないことだったが──体力の有りあまっている葉月にとっては、彼女の言葉どおりそれほど過酷なものではなかった。葉月の言葉に、凪沙はふふっと笑う。

「葉月はえらいね。さすがだよ」

 あこがれの先輩にほめられて、葉月の口元がゆるむ。葉月は少し凪沙に近づいて、何かを期待するような目で彼女を見上げた。凪沙は仕方なさそうに笑いながら、葉月の頭に手を置いて、髪をすくように撫でた。

「えへへ。ありがとうございますっ」

「大会がんばってね。応援しに行くから」

 凪沙の言葉に、葉月の顔がぱあっと明るくなる。

「えっ、ほんとですか!?」

「ほんとだよ。葉月の活躍、見届けないとだからね」

 葉月は嬉しさで飛び跳ねてしまいそうになるのを、必死で抑え込みながら言った。

「やった! なぎさ先輩にかっこいいとこ見せれるように、ボクがんばりますっ!」

 そんな葉月に凪沙はくすくす笑った。

 ***

 「葉月ちゃん、何かいいことでもあった?」

 練習の前のストレッチの間、陽菜が葉月にそう尋ねてきた。陽菜は葉月と同じ一年生の陸上部員で、部活外でも何かといっしょにいることが多い。あどけない顔立ちで一年生にしては胸が大きい陽菜は、気が弱い性格もあってか、よく男子にちょっかいを出されていた。そんな男子を葉月が追い払うのが常だった。

「へ? な、なんで分かったの?」

「葉月ちゃんずっとにこにこしてるもん。好きな男の子と話せた?」

「ち、違うよ! 好きな男子なんかいないし!」

 そんなふうに否定する葉月に、陽菜はうふふ、と笑う。

「じゃあ何があったの?」

「さっきなぎさ先輩と会っただけ。来月の大会、見に来てくれるんだって」

 葉月がそう言うと、陽菜は笑いながら言った。

「そっかー、よかったじゃん! 葉月ちゃん、なぎさ先輩のこと大好きだもんね」

 陽菜の言葉に、うん、と答えてしまってから、葉月は取り繕うように付け足した。

「あ、べつに、変な意味じゃないから! 先輩として、すっごく尊敬してるってだけ。たしかに、なぎさ先輩って、きれいだし、かっこいいけど……」

 慌てて言葉を並べる葉月を、陽菜はにこにこしながら見ていた。

 練習前のストレッチが終わり、ウォーミングアップをしている途中で、陽菜はコーチに呼び出された。「フォームの矯正をしてやる」──そうコーチが陽菜に言っているのを聞いて、葉月は嫌な予感がした。

 コーチの男性教師が、陸上部の女子をいやらしい目で見ていることを、葉月は感じ取っていた。同じ部員からも「コーチにセクハラをされた」という噂を聞いたことがあった。陽菜のような気弱なタイプは、たとえセクハラをされてもきっと拒めない。

(陽菜はボクが守らないと……!)

 ハードルドリルをこなしながら、葉月は横目で何度も陽菜とコーチの方を見ていた。最初の方こそ、まともにフォームの指導をしていたようだったが、やがて男はだんだん陽菜のからだに触るようになり……そして、陽菜が嫌がる素振りを見せているのに、足やおしりを撫でるように触りはじめていた。

(やっぱり……っ!)

 葉月はメニューを中断して、陽菜の方に駆け寄る。そして、男の手をつかんで叫ぶように言った。

「ちょっと、何やってるんですか! やめてください!」

 男は葉月が近くに来ていたことに気づかなかったように驚いた表情を見せる。そして、葉月を見下ろして言った。 

「何だ、星川。俺はただ花井にフォームの指導をしてただけじゃないか。なあ、花井?」

 コーチは同意を求めるように陽菜を見たが、陽菜は何も答えずにただうつむいていた。

「あんなの、指導じゃなくてセクハラです! 陽菜も嫌がってたじゃないですか!」

「嫌がってた? 俺にはそうは見えなかったけどなあ」

 男はわざとらしく言いながら、陽菜のセパレートユニフォーム姿を舐めるように眺める。高校一年生にしては大きく育った胸や、露出したおなかや、太もも……。陽菜は男の視線から逃れるように、からだの前で腕を組んだ。葉月はそんな男に、怒りが爆発しそうになる。

「あんたみたいなキモオヤジにべたべた触られたら嫌に決まってるでしょ! ほんと最低っ!」

 葉月は男から陽菜を守るように、男と陽菜の間に立って言った。男はその言葉に気分を害したように、葉月を険しい表情で見下ろす。

「おい、コーチに向かって何だその口の聞き方は。お前、中学のときに全国に出たからって調子に乗ってるんじゃないだろうな。お前みたいなのは高校では通用しないぞ」

「指導って言いながらセクハラしかしてないくせに! この変態っ!」

 葉月たちが言い合っている間に、騒ぎを聞きつけた陸上部員たちの注目が、彼女たちの方に集まり始めていた。これ以上言い合うと面倒事になると思ったのか、男は舌打ちをして彼女たちに背を向ける。

「チッ、邪魔しやがって。お前らちゃんと練習しとけよ」

 捨て台詞のように言って、男は控室に戻っていく。葉月は男の後ろ姿を睨みつけていたが、男が扉の向こうに消えると、陽菜に言った。

「陽菜、大丈夫? 変なことされなかった?」

「うん、大丈夫。葉月ちゃん、ありがと」

 男がいなくなって、陽菜はようやく安心したように顔をほころばせる。そんな陽菜に、葉月はふふっと笑った。

「また変なことされそうになったら絶対呼んで。あんなセクハラコーチ、ボクが追い払ってあげるから!」

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