「なんであんたがあんな動画持ってるのよ……!」
空き教室に入るなり、あたしは男子にそう詰め寄った。
放課後、クラスの男子からLINEが届いて……そこには、小柄な女の子が裸で何人もの男たちに囲まれて、泣きながらひどいことをされている動画と、「空き教室に来い」というメッセージが送られてきていた。動画の中の女の子は──あたしが見間違えるはずもない、中学生の柚乃だった。柚乃が昔、男たちに犯されたときに撮られた動画……その動画を、クラスの男子はどこからか手に入れてきたのだ。
「さあな。それにしても、この動画よく撮れてるよなあ。顔も身体もばっちり写ってるし」
「……っ、今すぐ消して」
あたしが男子を睨みながら言うと、男子は鼻で笑う。
「消すわけないだろ? 紗倉のエロ動画があるなんて分かったら、学校中の男子が見たがるだろうしな。あいつ、身体はイマイチだが顔は一級品だからなあ」
柚乃はかわいくて性格もいい、天使みたいな子だから、学校中の男子から人気がある。もし柚乃のあんな動画がほかの男子の目に触れたりしたらって思うと、あたしは気が気じゃなかった。でも、男子はニヤニヤ笑いながら言った。
「まあ、バラまいても俺は何も得しないからなあ。こういうのはもっと賢い使い方があるんだよ。例えば──これをネタにして、紗倉にエロいことさせるとかな」
「……っ!」
男子の言葉を聞いて、あたしは男子への怒りが爆発しそうになる。柚乃は中学生の時に、男の人たちに無理やりそういうことをされて、そのときのトラウマで今も苦しんでるのに……また柚乃にそんなことをさせるなんて許せない。
「そんなことしたら絶対許さないから! 警察に……」
「おいおい、いいのかよ。チクったりしたら、紗倉のエロ動画がネットに公開されちまうかもなあ。せっかくだから、顔出し無修正で載せといてやるよ」
「……っ」
もしそんなことになったら、柚乃のあの動画が、学校中どころか世界中の人に見られちゃうかもしれない。柚乃にとって、昔あんなことをされたってことは、あたしにさえ話してくれないような大事な秘密なのに……。
男子に逃げ道を塞がれて、あたしは必死に考える。男子に、柚乃に手出しさせない方法……。あたしは、それを一つだけ思いついてしまって──あたしがそれを頭の中からかき消しそうになる前に、男子はニヤけたまま言ってくる。
「でもなあ、紗倉は身体が今ひとつだからなあ。乳も全然育ってねえし。俺はあんなロリ趣味じゃねえから、どうせヤるんだったらもっとエロい身体したヤツの方がいいって思ってな」
そう言って、男子は粘つくような視線をあたしのからだに向けてくる。制服の上からでも形がわかってしまうおっぱいや、短くしたスカートから出した足をちらっと見て、笑みを深くした。あたしは気持ち悪くなって、自分のからだを隠すように腕を組む。
「ほんと最低……。最初からこのつもりであたしを呼び出したのね……」
あたしが男子を軽蔑するつもりでそう言うと、男子はそんなあたしの憎まれ口をバカにするように笑う。そして言った。
「ほら、さっさと選べよ。紗倉にヤらせるか、お前が紗倉の身代わりになってエロいことするか」
「……っ」
あたしは唇を噛む。ほかに何かいい方法はないかって考えたけど、何も思い浮かばなかった。
自分のからだを抱いている手が震える。こんな卑怯な男子にえっちなことをさせられるなんて、すごく屈辱的だけど……でも、柚乃が男子に同じようなことをされるのはもっとつらい。柚乃はあのことで、今でも思い出して眠れなくなるくらい苦しんでるんだから……。あたしが男子にえっちなことをされるくらい、我慢しないと──。
あたしは脅してきた男子に強い視線を向ける。
「……わかったから。でも柚乃には手を出さないって約束して」
覚悟を決めてそう言うと、男子はこれからあたしにすることを楽しみにするみたいににんまりと笑った。
「へへ、大好きな柚乃ちゃんのために身体を差し出すなんて健気だねえ。まあ、お前が俺の言うこと聞いてる間は、紗倉には手出ししないでやるよ。その代わり、お前のそのエロい身体をたっぷり教育して、性奴隷にしてやるからな」
そんなのになるわけない……。あたしは男子をきっと睨んだ。