男子は椅子に座ってわたしにスマホのカメラを向け始める。わたしはその前に立たされていた。
今から服を脱ぐ……しかも、男子の前で、撮られながら……。心臓が痛いほどどきどきしていた。
「あ、ついでに、脱ぐ前にスカートめくってパンツ見せろよ。パンチラって喜ぶ男子も多いからな」
「……っ」
やっぱり、撮った動画を他の男子に見せる気なんだ──。でもわたしには、男子に従う以外に選択肢がない。
わたしは制服のスカートの裾を持ち上げる。下着を見られるくらいなら、と思っていたけど、わたしのこの姿が男子からえっちな目で見られると思うと、やっぱりちょっと恥ずかしくなる。
男子はわたしのたくし上げをスマホに収めると、次の命令を下す。
「へへ、パンツはもういいぞ。脱げよ」
「……」
わたしはスカートから手を離し、カーディガンのボタンを一つずつ外す。桜色のカーディガンは、凪沙ちゃんに似合ってるって言われて、それからずっとわたしのお気に入りだった。わたしはそれを畳んで、近くの机に置いた。リボンを外そうとすると、男子が言ってくる。
「リボンと靴下はつけたままでいいぞ。そっちの方がエロいからなあ」
「……っ」
制服を脱いで、リボンと靴下をつけたままの姿がいいってこと……? あまり男子の言っていることの意味はわからないけど、わたしは言うとおりにする。リボンを取らないと、あとはブラウスとスカート──。でも、ブラウスを脱いだらもう下着姿になってしまう。そう思うと、手が震えた。そして、わたしはふと教室のカーテンが、中途半端に開いていることに気づく。
「ま、待って、カーテン閉めさせて」
「何言ってんだよ。さっき自分が何て言ったか忘れたのか?」
「で、でも……」
教室は二階で、窓は校庭に面している。部活の練習をしている子たちから見えてしまうかもしれない。目の前の男子に見られるだけならともかく、知らない子にも見られてしまったら──。
「ほんとに身代わりになる気あるのかよ。美沢はもっと恥ずかしいこともやってたぞ? 見せてやろうか?」
「……っ、そんなの、いいから……」
男子の前で撮られながら服を脱ぐより恥ずかしいこと……。わたしにはそんなこと想像もつかない。でも、わたしの動画で凪沙ちゃんを脅すような男子なら、そんなことをさせても全然不思議じゃなかった。もしそれが本当なら、これ以上凪沙ちゃんがそんな目にあうのは、考えただけでもつらい。
わたしは覚悟を決めて、震える手でブラウスのボタンを外そうとする。
「おいおい、下からに決まってるだろ? そんなことも知らないのかよ」
どっちから脱ぐかなんて、そんなの知ってるわけない……。それに、ブラを見られるのも、ショーツを見られるのも、恥ずかしさはあんまり変わらない。わたしはホックを外し、スカートを抜き取った。
「……っ」
男子の視線を素足に感じる。わたしは凪沙ちゃんみたいに足が長くてきれいなわけでもないから、じろじろ見られると余計に恥ずかしい。それに、もしショーツからあそこが透けたりしていたら──そう思うと、もうほとんど裸と変わらないような気さえする。
「早く上も脱げよ」
「……、うぅ……」
ブラウスのボタンに手をかける。指先が震えるせいで、なかなかうまく外れなかった。一つずつ苦労して外していくと、開いた隙間から視線が滑り込んでくるように感じる。
ボタンをすべて外し終え、わたしはブラウスを脱いで下着姿になる。裸に白のキャミソールブラと、ピンクのショーツ、白のソックスだけの姿に──。
「はあ……色気のない下着だなあ。小学生かよ」
「……っ」
こんなふうに見られるなんて思ってなかったから、いつもどおりの飾りっ気のない下着しかつけてきていない。せめて体育の授業があるときならもっとかわいいやつをつけてきたのに……。
「まあいいや。続けろよ」
わたしがそんなことを考えていると、男子は続きを促す。次は……土下座、だっけ?
こんな卑怯な男子の前で膝をついておねがいするなんてすごく嫌だけど、これで凪沙ちゃんが助かるなら、それくらいは我慢しないとダメだ。これも凪沙ちゃんを助けるため──。
そう自分に言い聞かせて、教室の床に膝をつこうとすると、男子は言った。
「おい、まだ脱ぐものが残ってるだろ?」
「え……? し、下着も……!?」
「当たり前だろ」
だって、下着を脱いだらほんとに裸になってしまう。一緒に寮で暮らしている凪沙ちゃんにだって、裸を見られたことなんかほとんどないのに……。
「し、下着は許して……ほ、ほんとに恥ずかしいから……」
わたしは男子に懇願したけど、男子は鼻で笑った。
「別にやらなくていいぞ、美沢の方がお前よりエロい体してるしなあ。美沢は何回脱がせても悔しそうな顔するから興奮するんだよな」
わたしはその言葉を聞いて、心が痛くなる。凪沙ちゃんはわたしのために、こんなことを何回もさせられたんだ……。しかも、凪沙ちゃんはわたしなんかよりよっぽど大人なからだをしているから、男子から今みたいな下品なことを言われて、傷ついたかもしれない。
凪沙ちゃんにもうそんな思いはしてほしくない。だったら、わたしがするしか……。