やがて、男は彼女の唇から顔を離す。葉月が絶頂の余韻に呆然としていると、男は次の命令を下す。
「おい、何ぼーっとしてるんだ? 精液出してもらった後は何するか知ってるだろ」
「……っ」
葉月にはその言葉の意味がとっさには分からなかったが、彼女のからだを散々犯し、中出しまでした男が求めてくることなんて一つしかなかった。それは屈辱的な要求だったが、抵抗する気力もない葉月はうつむいて弱々しく返事をする。
「……っ、はい……」
葉月は秘所の中に入ったままだった男のものを抜いて、その膝から降りる。そして、男の足の間にひざまずいた。
「……っ」
あんなに葉月の中に欲望を吐き出したにもかかわらず、男のものはまだ勃って大きくなったままだった。そして、男が彼女の中に注ぎ込んだ白い体液と、彼女の秘所からこぼれた蜜でべっとりと汚れている。それを舐めて綺麗にすること──それが、男がほのめかした要求だった。
最低で大嫌いなコーチのものに口をつける……いつもの葉月なら何があっても拒絶するようなことだったが、男に痛みと快感で屈服させられた今の彼女には、男の要求に従うことしかできなかった。葉月はその恥辱に顔を真っ赤にしながら、舌を精一杯伸ばして、男のものに近づける。
「……っ!」
舌が男のものに触れた瞬間、それは刺激を与えられた虫のようにピクッと蠢く。葉月の舌の上に、少し生臭くて甘いような自分の秘所の液体の味と、腐った魚のような男の陰茎の味が混じり合って伝わってくる。今すぐに口を離したい気持ちに駆られるが、葉月は我慢してそれを続ける。
「へろ……っ、ん……っ」
葉月は猫のように男のものについた液体を、少しずつ舐め取っていく。嫌がりながらも自分のものに口をつける彼女の姿を見て、男はほくそ笑む。しかし、男はそれだけでは満足しなかった。
「へへ……おい、そんなのでいいと思ってるのか? お仕置きが必要だなぁ」
「……っ」
男にそう言われて、葉月の肩が震える。そんなやり方では男の欲望を満たせないことは、葉月にも分かっていた。葉月は男の示唆に従って、ほんの少しだけ口を開いて──そこに、男のものを咥えた。
「はむ……っ、ん……っ、んちゅ……っ、へろ……っ」
葉月は口に含んだ男のものに、舌を沿わせる。陰茎をくすぐる彼女の柔らかい舌の感触に、男は満足げに言った。
「へへ、そうだ、分かってるじゃねえか。そのまま綺麗にするんだぞ」
「……っ」
口いっぱいに広がるオス臭いニオイで、頭がくらくらしそうになる。それでも、葉月は必死に男のものを舌でなぞった。彼女の口の中には、少しずつ男の精液が混じった唾液が溜まってくる。そんなおぞましいものも、葉月は無意識のうちに飲み込んでしまっていた。
「ん……っ、んちゅ……っ、んく……っ、れろ……っ」
やがて、男のものは彼女の秘所を犯してきたときのように硬くなってくる。それが彼女の口の中でビクッと跳ねると、先端からねばついた液体を分泌し始めた。葉月はそんな先走りの酸っぱい液体を舌ですくい取り、まるでもっとほしがるかのようにその先端を舌で刺激する。
眉を寄せて我を忘れたように男に奉仕する葉月を、男はニヤニヤ笑いながら見下ろして言った。
「下ばっか見てないでこっちに顔向けろよ。フェラする時は男の方見るのが礼儀だろ」
「……っ」
葉月は男のものを咥えたまま、男の方を上目づかいに見上げた。その瞳はわずかに潤んでいて、頬は上気したようにほんのりと桃色に染まっている。まるで、その行為に性的な興奮を感じていたかのような表情だった。
「へへ、夢中でチンコしゃぶりやがって。そろそろ自分の立場が分かったか?」
「……っ」
男を見つめる葉月の瞳がわずかに揺れる。そんな反応は、男の葉月への嗜虐心を高めてしまって──男は彼女の心を追い詰めるように言った。
「ほら、自分が何なのか言ってみろ」
男の言葉に、許しを乞うように葉月の目尻が下がる。男が求める言葉は、葉月には分かっていた。しかし、その言葉を口にするのは、それを認めてしまうのと同じで──男に無理やり犯されることよりもずっと屈辱的だった。
葉月がその言葉をためらっていても、男は彼女に許しを与えることはなかった。やがて、葉月はあきらめたように、ぽつりとつぶやく。
「……っ、ぼ、ボクは……、こ、コーチの、せ、性奴隷、です……っ」
男への服従を認めるような葉月の言葉に、男は哄笑した。
「へへ、そうだよなあ。お前は俺の性処理道具なんだから、二度と逆らったりするなよ?」
「……っ、はい……」
葉月が力なくそう返すと、男はまた含み笑いをする。そして──
「へへ、おい、聞いたか? こそこそ見てないで入って来いよ」
男が指導室の扉の方に向かってそう言うと、その向こうで慌てるような気配がする。葉月が顔を真っ青にしてそちらを振り返ると、入り口のところにユニフォーム姿の陽菜が立っていた。
「ひ、陽菜……っ! そ、そんな……っ、い、いつから……っ」
葉月はパニックに陥ったように、言葉にならないことを口にする。陽菜が何も答えないでいると、男は言う。
「最初からずっと見てたよなあ。コイツが俺にカラダ弄られて喜んでるから、中出しでイってるまでな」
陽菜は首を振ったが、それは空虚な否定にしかならなくて──逆に、男の言葉が真実であることを物語っていた。最初から全部……男の手でイかされたのも、男のもので犯されたのも、男のものを舐めているのも、男に屈服させられた姿も、全部見られてしまった──しかも、親友の陽菜に……。葉月の心に、そのことは今までにないほど深い傷を作る。
葉月が今にも泣き出しそうな表情を浮かべるのを見て、男は愉悦に浸りながら言った。
「せっかくだし次は花井も混ぜてヤるか。そろそろコイツの貧相なカラダにも飽きてきたしなあ」
そして、男は立ちすくんだままの陽菜にいやらしい目を向ける。陸上ユニフォームを押し上げる大きな胸や、くびれのある腰回り、そしてむっちりとした太もも──スレンダーな葉月とは対照的に、男にはたまらない魅力を持った肢体だった。陽菜はその視線に怯えるように、自分のからだを抱く。
「……っ、そ、それはだめ……っ! ぼ、ボクになら、何してもいいから……っ!」
葉月が必死にそう言うと、男は下品に彼女を冷やかした。
「へえ。ならもっと俺を喜ばせてもらわないとなあ。せめて、パイズリの代わりになることでも考えとけよ」
「……っ」
親友の陽菜の前で自分のコンプレックスをあげつらわれて、また葉月の目尻が下がる。男はそんな彼女に構わず、さっきまで葉月が口で奉仕していた陰茎をズボンにしまうと、立ち上がった。
「今日はこの辺にしといてやるよ。お前が汚した床、綺麗にしとけよ」
そう言い残して、男は指導室から出て行った。じめじめした小さな部屋には、葉月と陽菜だけが取り残される。
「……っ、陽菜……ぼ、ボク……」
変態的なことをされている姿を見られて──しかも、陽菜にセクハラをしてくるような最低なコーチにそんなことをされているのに、絶頂してしまって……親友の陽菜にまで蔑まれたらと思うと、葉月は陽菜と目を合わせることもできなかった。言いよどむ葉月に陽菜は駆け寄って、ユニフォームを脱がされた彼女のからだをぎゅっと抱きしめる。
「は、葉月ちゃん……っ、ごめんね……」
「へ……っ?」
葉月は驚いて固まってしまう。そんな葉月に、陽菜は言いつのった。
「わ、わたし、葉月ちゃんがひどいことされてるのに、見てることしかできなくて……っ、いつも葉月ちゃんが、わたしのこと、守ってくれてるのに……。ほんとごめんね……」
葉月を抱きしめる陽菜の手に力がこもる。陽菜のからだの震えが、葉月にも伝わってきて──陽菜が泣いていることに、葉月は気づいた。
「だ、大丈夫っ、大丈夫、だから……っ」
葉月は慌てて、なんとか彼女を落ち着かせようと陽菜の頭を撫でた。それで少し平静を取り戻したように、陽菜は葉月に言った。
「……わたしのこと、きらいになった?」
「へ? な、なるはずないよ。陽菜のこと大好きだよ」
陽菜は安心したようにほっとため息をつく。
「よ、よかった……。葉月ちゃんに嫌われちゃったらどうしようって、すっごく怖くて……」
泣き出してしまうほど陽菜がそのことを心配していたと知って、葉月はくすぐったい気持ちになる。そして、陽菜に言った。
「大丈夫。陽菜のこと、嫌いになんかならないよ。それに、ボクだって、陽菜に失望されるようなとこ見せちゃって……」
葉月の言葉に、陽菜はかぶりを振る。
「し、失望なんて、絶対しない! 葉月ちゃんは、わたしを守ってくれる、ナイト様だもん」
「な、ナイト?」
聞き慣れない言葉を葉月が繰り返すと、陽菜ははっとして取りつくろう。
「な、なんでもない。わたしも、葉月ちゃんのこと大好きだよ」
葉月はそんな陽菜にくすっと笑って、陽菜に頭を寄せて言った。
「ありがと。ずっと親友だからね」
葉月のそんな言葉に、陽菜もうれしそうに微笑んだ。

